世界農業遺産

静岡の茶草場農法茶

静岡の茶草場農法が
守ってきたもの

茶づくりへのこだわりが、日本から失われつつあった
里山の草地の環境を守り続けています。

茶草場農法(ちゃぐさばのうほう)とは、茶園の畝間にススキやササを主とする刈敷きを行う伝統的農法のことです。この茶草によって、茶の味や香りが良くなると言われています。
静岡県の茶栽培では、秋から冬に掛けて、茶園の周辺にある茶草場の草を刈って茶園の畝間に敷く作業が行われています。

夏にはただの草むらにしか見えない茶草場であるが、秋になるときれいに草は刈られ、刈られた草が束ねられて干してある風景を見ることができます。このような風景は、昔は日本中どこにでも見られた、ありふれた里山の風景でした。 一昔前であれば、農村では、刈った草を肥料として田畑に入れたり、牛や馬の餌にしたり、かやぶき屋根の材料にしていました。 このような人の手によって維持管理されている草地環境は「半自然草地」と呼ばれています。

茶園に敷く草を刈り取る「茶草場」

このような草刈場は他ではほとんど見られず、静岡県に特徴的に見られる風景です。

刈られた草が束ねられて干してある

この茶草によって、茶の味や香りが良くなると言われています。

半自然草地が作り上げる、豊かな里山

豊かな生物多様性は、適度に人の手が入ることで守られていきます。

茶草場で刈り取る草の中で代表的なものは「ススキ」。ススキは10〜20年ほどの長い時間をかけて土に還ります。「ススキ」が分解されて出来た土は、手にとるとふんわりと崩れてしまうほどやわらかく、茶草場のある茶園では、その土で茶の木の根元を覆い、茶栽培が行われています。
草を敷くことによって、茶の品質がよくなることから、茶農家の方々は手間ひま掛けて、草を刈り、草を敷いてきました。この茶づくりのこだわる思いが、日本から失われつつあった里山の草地の環境を守り続けてきたのです。

茶草場に息づく生物多様性

300種類以上の草地性植物が観察され、固有種や絶滅危惧種も確認されています。

毎年秋の草刈りが、茶草場を多様な生物の生息する特別な場所に変えてきました。

茶草場のある代表的な場所の一つ掛川市粟ヶ岳中腹では、「カケガワフキバッタ」という虫が存在しており、このエリアだけに生息しています。カケガワフキバッタの良好な生息環境を保つためには、「定期的な草刈りと草の搬出で環境の移り変わりの進行を抑制すること」が必要と言われています。

豊かな生物多様性は、適度に人の手が入ることで守られており、人の手によって維持管理されている草地環境は「半自然草地」と呼ばれています。 人の手が入って、草を刈ることは、一見すると自然を破壊しているようにも見えますが、実際には、人の手が適度に入った里山環境では、多くの生物種が生息することが知られています。

草を刈らずにおくと、生存競争に強い植物ばかりが生い茂ってしまうので、生息できる植物の種類はかえって少なくなります。一方、定期的に草を刈り取ることによって、大きな植物が茂ること無く、地面まで日の光が当るので、生存競争にも弱いさまざまな植物が生息をすることができます。そのため、里山の草地ではさまざまな植物が生息して、豊かな生物多様性を作り上げるのです。

茶草場農法で作られた茶

静岡の農家の茶づくりのこだわりの味を、オフィス向けに商品開発。

静岡県内(掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町)の茶草場農法を伝承している茶園で、手間を惜しまず生産された茶を、スプレードライ製法(噴霧乾燥法)でドリンクディスペンサー用として商品開発した「静岡の茶草場農法茶」。茶本来の持っている自然な旨みと渋みのあるインスタントティーをお楽しみいただけます。

世界農業遺産システム

静岡の茶草場農法は、2013年に世界農業遺産として認定されました。

世界農業遺産システム(GIAHS)は、世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域(農林水産業システム)を、国際連合食糧農業機関(FAO)が認定する制度です。
静岡の茶草場農法は、高品質な茶の生産のみならず、豊かな生物多様性の保全にも繋がっており、農業と生物多様性が同じ方向を向いて両立していることが世界から注目され、高く評価されるようになりました。

『社会や環境に適応しながら何世紀にもわたり発達し、形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化・景観・生物多様性に富んだ、世界的に重要な地域を次世代へ継承すること』を目的として、2002年(平成14年)に創設されました。
2020年3月現在、「世界農業遺産」は、22ヶ国59地域、日本では11地域が認定されています。

世界農業遺産とは(農林水産業ホームページ)

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